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「昨日の自分に教えたいこと」をテーマに書き散らしてます

レザークラフト好きなら知っておきたい『皮』を『革』にするなめし工場を見学してきました


東京墨田区にある革のなめし工場に見学に行った時の体験レポートです。



 

 

革鞣し工場見学

 先日、山口産業株式会社さんが主催する革なめし工場の見学会に行ってきました。


募集要項はこんな感じ。


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八広駅から徒歩約10分。荒川土手沿いの道をしばらく歩くと、ちょっと変わった外観の建物が見えてきました。

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この山口産業さんは1938年創業の会社で、豚の革のなめしを主に行っているそう。

 

昔から日本の豚革なめしの技術は非常に高いものであったようで、

 

ポーターやダコタ、ビビアンなどの有名ブランドにも素材を卸しているとのことでした。びっくりです。

 

ところで、「なめす」という工程がイマイチピンとこない人もいると思うので、解説しながら見ていきます。

 

突然ですが質問です。

 

私たちがよく目にするレザージャケットや財布に用いられる「革」って、本物の動物の皮膚を使っているのですが、

 

どうして生き物の皮膚を使っているのに表面が腐らないのか、疑問に思ったことはありませんか?

 

実は、ここに「なめし」という技術が用いられているんです。

 

家畜の牛や豚から食用部分を取り除くと、表面の皮膚が残ります。この段階ではまだ「革」ではなく「皮」です。

 

この「皮」の状態のままだと、タンパク質が残っているので時間が経つと腐ってしまい、とても財布やジャケットに用いることはできません。

 

さらに油脂や体毛も残っているので、まずはこうした余分なものを落としてきれいな状態にする必要があります。

 

山口産業さんでは、下の画像のようなドラム型の機械を使って、余分なものを落としているとのことでした。

 

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ちなみに、「油脂」は産業廃棄物として処分されるものと思われがちなんですが、実は「石けん」として再利用されているんですよ。

 

ライオンや花王など、有名な洗剤メーカーが墨田区に集中しているのは、こうした革なめし工場が近くにあったからなんです。

 

さらに言えば、屠殺場があって身分の低い人々が集中していた地域でもあるということだったのですが、この辺の話はまた今度にします。

 

 

このドラム型の機械がある工場内部に入ると、まだ「皮」の状態の原材料が山積みになっているので、結構なニオイがします。

 

私が訪れたのは1年で一番寒い1月の見学会だったので、おそらく比較的ニオイは少なかったと思うのですが、

 

これが夏場の暑い日だったらと思うと…。ニオイに敏感な私には堪えます。

 

また、山口産業さんはMATAGIプロジェクトという事業も営んでいて、これは近年増加傾向にあるイノシシやシカによる農作物への被害のために、

 

捕獲されてジビエとして食される動物たちの皮を、牛や豚とは少し違った革として産地に送ってあげるというプロジェクトなんです。

 

実際に私もシカやイノシシ、クマなどからつくった革を触らせてもらいましたが、いつもレザークラフトで使っている革とはちょっと違った手触りでしたよ。
 

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これがそうしたMATAGIプロジェクトで使用されるサンプルの革。


 

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こちらは届いたばかりのクマの原皮だそうです。近づくとケモノ臭がしました。

 
 

さてさて、かなり脱線しましたが「なめし」の工程について紹介しますね。

 

余分なものを落とした原皮に、「なめし剤」という薬品を使ってコラーゲン質と合成させることによって、

 

腐ることなく、柔らかさも備えた「革」へと変化させることができるんです。

 

この「なめし剤」には、植物からとれる渋みのもとである「タンニン」という成分を用いたり、「クロム」という金属を用いることができます。

 

このクロムを使った「クロムなめし」は、大戦中のドイツにて、軍靴などの材料となる革を生産するための、タンニンが輸入できなくなってしまったので、

 

科学者たちがクロムという金属を用いたなめし技術を開発した、という歴史があります。

 

ドイツの技術力には驚かされますね。

 
 

クロムなめしの場合は金属を用いているので、金属アレルギーの方や肌の敏感な方にはあまりおすすめできないものなんだそうで、

 

山口産業さんの社長も、クロムなめしの革を触るとかゆくなってしまうとのことでした。

 

革製品に用いられるのはほとんどがクロムなめしの革なので、

 

レザージャケットや革の財布を身につけると謎のかゆみがでてしまう、といった方はもしかしたらクロムに対する金属アレルギーなのかもしれないですよ。

 

その場合には、植物タンニンなめしの「ヌメ革」を使用した製品を選んだり、合成皮革やPUレザーと表示された製品を選ぶといいかもしれません。

 
 

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そしてこちらはなめしを行って染色もすませた豚革を乾燥させているところ。

 

窓からの西日もあって、圧巻の光景でした。

 

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山口産業さんのロゴマークと一緒にパシャリ。

 

ここは2階部分のスペースですが、なめしが終わって染色も終わると、なめし剤や染色剤由来の何とも言えないいい匂いが感じられました。

 

この革の匂いが、私をレザークラフトの道にいざなった要因でもあります。あーいい匂い。(手元にある革のはぎれの匂いを嗅いでみた)

 

 

 

ということでこの辺りでおしまい。

 

お忙しい中工場見学を開催してくれた社長さんありがとうございました。渋くて結構イイ男でしたよ。

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