2年ほど前に読んだ『いつも「時間がない」あなたに』を再読中。
「欠乏」は高い集中力をもたらす反面、視野狭窄に陥る危険性がありました。
今回はそれに関連した「締め切り効果」の是非を考えたいと思います。
SPONSER LINK
1.「欠乏」による締め切り効果
「締め切り効果」ってのが昔からよく知られています。
締め切りの直前は集中力が高まり、これまでにないスピードで作業を終わらせられる現象のことであります。
たとえば、学校の宿題を当日の朝ギリギリにやって、なんとか間に合った…なんて経験はだれにでもあるでしょう。
その「ギリギリ感」によって、宿題はいつもよりずっと早く終わったはずです。
これが締め切り効果の威力で、「時間が欠乏している」という状況下だと、集中力をすべて目の前の課題に振り分けることができるようになります。
2.集中ボーナスとトンネリング
仕事でも楽しみでも、時間があまりないときのほうが得るものは大きいのだ。私たちはこれを「集中ボーナス」と呼ぶ。欠乏による心の占拠が生むプラスの成果だ。
締め切り効果による集中力アップは、『いつも「時間がない」あなたに』でいう「集中ボーナス」にあたります。
同書では、大学生に3つの論文の校正を依頼した実験が紹介されています。
3週間という長い期間の締め切りを設定したうえで、
- 週に1本提出するグループ(厳しい締め切り)
- いつ提出してもいいグループ(ゆるい締め切り)
の2に学生を分け、両グループの校正の出来具合を調べたんだそうな。
その結果、週に1本という厳しい締め切りを課せられた学生の方が、より誤字を見つけ、期限に遅れることが少なかったとのこと。
つまり、厳しい締め切りがあると生産性が高まり、よりよい成績を取れるということであります。
「じゃあいつも締め切りを厳しくして勉強すればいいじゃん!」と思われるかもしれませんが、実はこの集中ボーナスには負の側面もあったりします。
それが「トンネリング」という現象です。
3.トンネルの外側に注意すべし
「トンネリング」は、トンネル視を連想させることを意図した表現である。トンネル視とは、トンネルの内側のものは鮮明に見えるが、トンネルに入らない周辺のものは何も見えなくなる視野狭窄のことである
トンネリングとは、目の前のこと以外目に入らなくなってしまうことです。
当日の朝学校の宿題に集中できるのは、時間がないという欠乏感のおかげで、友人の話や次の授業の予習といった事柄を無視できているからです。
欠乏は「集中」を生むと言う代わりに、欠乏は「トンネリング」を引き起こすと言うこともできる。つまり、目先の欠乏に対処することだけに、ひたすら集中するのだ。
ひとつのことに集中できるというのは、誘惑の多い現代において大きなアドバンテージになります。
その意味では、「欠乏」が生み出す集中力ボーナスは、おおいに活用すべきものでしょう。
しかし、締め切りに追われて仕事に取り組んでいるとき、もしかすると愛する家族の言葉を無視してしまっているかもしれません。
締め切り間近の仕事を終わらせることに集中力を100%費やしているために、トンネルの外、すなわち家族の言葉が耳に入らなくなってしまうんですな。
締め切り効果を使って作業に取り組もうとするときには、「目の前の仕事よりも重要なことはないか?」と、一呼吸置いて考えるようにしましょう。
まとめ
- 時間の欠乏が生み出す「締め切り効果」は、たしかに高いパフォーマンスを発揮する
- インプットできる時間が少ないと高い生産性を見せる「集中ボーナス」のおかげ
- 視野が狭くなる「トンネリング」に気をつけて、重要なものごとを見極めよう
以上、『「締め切り効果」はたしかに生産性をあげるけど「トンネリング」には気をつけようねって話』という記事でした。
締め切り効果にばかり頼ってしまうと、「俺、締め切り前にならないと集中できないんだ」みたいな締め切り効果依存症になってしまいます。
そうならないためにも、日頃から計画的に勉強や仕事を進めることが大事になりそうですね。
家事や雑事などちょっとした「めんどうなこと」に取り組むトレーニングをするだけでも、自制心を鍛え計画性のある人間になれますんで、ぜひお試しを。